Rナギの数学日記

ゆまるの数学日記

元通信制高校生の数学ノート

Legendreの公式

Legendreの公式(Legendreの定理)*1は,数論の基本的な公式(定理)です.チェビシェフの定理( n 2nの間に素数が存在する)などの証明でも登場するような公式ですので,高校生でも覚えておくといろいろ得をすると思われます.

Legendreの公式

自然数  n に対して,  n に含まれる素因数  p の個数( n素因数分解したときの  p の累乗指数)を  \mathrm{ord}_p(n) とすれば,

 \displaystyle \mathrm{ord}_p(n!) = \sum_{i=1}^{\infty} \left[ \frac{n}{p^i} \right] = \sum_{i=1}^{[\log_{p}n]} \left[ \frac{n}{p^i} \right]

が成り立つ.ここで  [ x ] x を超えない最大の整数を表すものとする.

証明*2

 n までの  p の倍数は  \displaystyle \left[ \frac{n}{p} \right] 個である.( p の倍数は, p から  p 個おきに出てくることに注意せよ)
また, n までの  p^2 の倍数は  \displaystyle \left[ \frac{n}{p^2} \right] 個である.
これを繰り返すことで, n! に含まれる素因数  p の個数を数えることができ,それは  \displaystyle \sum_{i=1}^{\infty} \left[ \frac{n}{p^i} \right] である.
また, i \gt \log_{p} n のとき  \displaystyle \left[ \frac{n}{p^i} \right] = 0 であるから, \displaystyle \sum_{i=1}^{\infty} \left[ \frac{n}{p^i} \right] = \sum_{i=1}^{[\log_{p}n]} \left[ \frac{n}{p^i} \right] である.Q.E.D.

大学入試問題

問題.  p素数 n を正の整数とするとき, (p^n)! p で何回割り切れるか.

('09 京都大学文甲共通)

解答

求める数は  \mathrm{ord}_p((p^n)!) である.Legendreの定理より,

 \begin{align} \displaystyle 
\mathrm{ord}_p((p^n)!) &= \sum_{i=1}^{[\log_{p}p^n]} \left[ \frac{p^n}{p^i} \right] = \sum_{i=1}^{n} p^{n-i} \\
&= p^{n-1} + p^{n-2} + \cdots + p + 1 = \frac{p^n - 1}{p - 1}
\end{align}

素数の無限性の証明

素数の無限性の証明は山ほどあるが,Legendreの定理を用いて証明することもできます.すごい!!

素数の無限性の証明

 \begin{align} \displaystyle 
\mathrm{ord}_p(n!) &= \sum_{i=1}^{\infty} \left[ \frac{n}{p^i} \right] \leq \sum_{i=1}^{\infty} \frac{n}{p^i} = \frac{n}{p} \cdot \frac{1}{1-\frac{1}{p}} \\
&= \frac{n}{p-1} \leq n
\end{align}

ここで,素数を有限個と仮定する.また,素数すべての積を  P とする.

 \displaystyle n! = \prod_{p:prime} p^{\mathrm{ord}_p(n!)} \leq \prod_{p:prime} p^n = P^n

従って, \displaystyle 1 \leq \frac{P^n}{n!} であるが,これは十分大きい  n では成り立たない.Q.E.D.

終わりに

何かといろんなところで登場するこの公式.覚えておくといいことあるかも...

*1:「Polignacの公式」としても知られているが,Legendreの方が先にこの公式を得ていたとされている.

*2:こちらのサイトにも証明が載っています.イラストがあるのでわかりやすいかも.mathtrain.jp