Rナギの数学日記

ゆまるの数学日記

元通信制高校生の数学ノート

世界一受けたくない大学入試数学【1995年京大文系後期】

昨年度(2019年)のセンター英語リスニング第一問に戸惑った受験生も少なくなかっただろう.今後の大学入試では,試験中に想定外のことが起きても,冷静に問題と向き合い解答する力を求めてくるかもしれない(知らんけど).

次の問題は,1995年の京都大学文系後期の問題である.強調したい部分をを太字にした.

問題: 自然数  n の関数  f(n),\, g(n)

 f(n) = n 7 で割った余り,

 \displaystyle g(n) = 3 f \left( \sum_{k=1}^7 k^n \right)

によって定める.

(1)すべての自然数  n に対して  f(n^7) = f(n) を示せ.

(2)あなたの好きな自然数  n を1つ決めて  g(n) を求めよ.その  g(n) の値をこの設問(2)におけるあなたの得点とする.

(1995年京都大学文系後期)


甚だ迷惑な問題文である.素直に 『 g(n) の最大値を求めよ』という問題でよいではないか.もしかすると,「もしも  g(n) の最大値を求められなくても,我々に点数を与えてくださるなんて,京大様は慈悲深い!!」と思う人もいるかもしれない.しかし実はこの問題,最大値を与える  n 以外では  g(n) = 0 だ.無慈悲である*1

ところで,冷静に考えればこの問題はさほど難しくない. f(n) の最大値は明らかに  6 であるから, g(n) の最大値は  18 ではないかという予想が立つ.この値は 設問(2)の得点としても妥当だ.

解答

(1)以下,合同式 7を法とする.示すべき等式は, n^7 \equiv n に等しい*2.何にも考えずにやるなら, n \equiv  0, 1, 2, \cdots, 6 と場合分けする.あるいは

 \begin{align} n^7 - n &= n(n^6 - 1) = n(n^3 +1)(n^3 - 1) \\
&= n(n+1)(n^2 - n + 1)(n - 1)(n^2 + n + 1) = n \left( n + 1 \right) \left\{ \left( n - 3 \right) \left( n + 2 \right) + 7 \right\} \left( n - 1 \right) \left\{ \left( n + 3 \right) \left( n - 2 \right) + 7 \right\} \\
&= (n-3)(n-2)(n-1)n(n+1)(n+2)(n+3) + \left( \text{7の倍数} \right) \end{align}

と式変形して,連続7数の積が 7の倍数であることからも示せる.

(2) \displaystyle k^n \equiv f \left( k^n \right) より  \displaystyle \sum_{k=1}^7 k^n \equiv \sum_{k=1}^7 f \left( k^n \right)

 \displaystyle \therefore f \left( \sum_{k=1}^7 k^n \right) = f \left( \sum_{k=1}^7 f \left( k^n \right) \right) = f \left( 1 + f \left( 2^n \right) + f \left( 3^n \right) + \cdots + f \left( 6^n \right) \right)

これと(1)より  n = 1, 2, \cdots , 6 を調べれば十分である.順々に計算をしていけば  n = 6, (13, 20, \cdots) で最大値  g(6) = 18 を取ることがわかる.



固い文体で書いてみました.(2)の最後は愚直に計算をする以外にいい方法が見つかりませんでした.

*1:しいて言うならば,論証の手間(?)が省けて,時間短縮になる.やったね!

*2:フェルマーの小定理 p = 7 の場合である.

eが無理数であることの証明【1997年阪大理系後期】

直接問題文には登場しませんが, e (勿論自然対数の底)が無理数であることが,この問題の背景となっている事実だと思います.

問題: 自然数  n に対して関数  f_n(x) = x^n e^{1-x} とその定積分  \displaystyle a_n = \int_0^1 f_n(x) dx を考える.次の問いに答えよ.

(1)区間  0 \leq x \leq 1 上で  0 \leq f_n(x) \leq 1 であることを示し,さらに  0 < a_n < 1 が成り立つことを示せ.

(2) a_1 を求めよ. n > 1 に対して  a_n a_{n-1} の間の漸化式を求めよ.

(3)自然数  n に対して等式  \displaystyle \frac{a_n}{n!} = e - \left( 1 + \frac{1}{1!}+ \frac{1}{2!}+ \cdots + \frac{1}{n!} \right) が成り立つことを証明せよ.

(4)いかなる自然数  n に対しても, n! e は整数とならないことを示せ.

(1997年大阪大学理系後期)


さほど難しくない(正解したい)問題ですので,20分を目安に解答してみてください.また, e無理数であることも併せて証明しましょう.以下,簡単に解答を紹介します.

略解

(1) 0 < x < 1 f_n'(x) > 0 なので, f_n(0) = 0,\, f_n(1) = 1 より  0 \leq f_n(x) \leq 1 である.また,等式は常には成り立たないから, 0 < a_n < 1

(2)部分積分法より  a_1 = e- 2,\, a_n = n a_{n-1} - 1

(3)(2)の式を  n! で割ると, \displaystyle \frac{a_n}{n!} - \frac{a_{n-1}}{(n-1)!} = - \frac{1}{n!}.両辺  n = 2, 3, \cdots , m で足し合わせて,題意の式を得る( n = 1 でも成り立つ).

(4)(3)の式を  n! 倍した式と  0 < a_n < 1 より明らかである.

さて,ここで  e有理数であると仮定をすると, e > 0 より,とある互いに素な自然数  n, m が存在し, \displaystyle e = \frac{m}{n} と書けますが, n!e が整数となり矛盾します.よって  e無理数であることが証明されました.


また,本題とは離れますが,(3)の式で  n \to \infty の極限をとると,

 \displaystyle e = \frac{1}{0!} + \frac{1}{1!}+ \frac{1}{2!}+ \cdots \cdots
が得られます.

大学入試問題研究2018~整数~

2018年難関大学入試の整数問題を集めました.

解答解説は随時更新します.

問題: 正の整数  n の各位の数の和を  S(n) で表す.たとえば

 S(3) = 3,\ S(10) = 1 + 0 = 1,\ S(516) = 5 + 1 + 6 = 12

である.

(1) n \geq 10000 のとき,不等式  n > 30 S(n) + 2018 を示せ.

(2) n = 30 S(n) + 2018 を満たす  n を求めよ.

(18 一橋大学前期 第1問)

問題: 整数  a,\ b は等式

 3^a - 2^b = 1 \tag{1}

を満たしているとする.

(1) a,\ b はともに正となることを示せ.

(2) b > 1 ならば, a は偶数であることを示せ.

(3)上式(1)を満たす整数の組  (a,\ b) をすべてあげよ.

(18 東北大学理系前期 第3問)

問題: 数字の  2 が書かれたカードが  2 枚,同様に,数字の [0,\ 1,\ 8] が書かれたカードがそれぞれ  2 枚,あわせて  8 枚のカードがある.これらから  4 枚を取り出し,横一列に並べてできる自然数 n とする.ただし, 0 のカードが左から  1 枚またな  2 枚現れる場合は, n 3 桁または  2 桁の自然数とそれぞれ考える.例えば,左から順に  0,\ 0,\ 1,\ 1 の数字のカードが並ぶ場合の  n 11 である.

(1) a,\ b,\ c,\ d は整数とする. 1000a + 100b + 10c + d 9 の倍数になることと  a + b + c + d 9 の倍数になることは同値であることを示せ.

(2) n 9 の倍数である確率を求めよ.

(3) n が偶数であったとき, n 9 の倍数である確率を求めよ.

(18 北海道大学理系前期 第3問)

問題: 数列  a_1,\ a_2,\ ,\ \cdots \cdots \displaystyle a_n = \frac{{}_{2n+1} \mathrm{C}_n}{n!}\ (n = 1,\ 2,\ \cdots \cdots) で定める.

(1) n \geq 2 とする. \displaystyle \frac{a_n}{a_{n-1}} を既約分数  \displaystyle \frac{q_n}{p_n} として表したときの分母  p_n \geq 1 と分子  q_n を求めよ.

(2) a_n が整数となる  n \geq 1 をすべて求めよ.

(18 東京大学理科 第2問)

ウォリス積分を制覇する【高校数学】

ウォリス積分といえば,毎年どこかの大学入試で出題される,数学Ⅲの超頻出問題です.この記事では次の定積分をウォリス積分とします.

 \displaystyle I_n := \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \sin^nx dx

ただし nは非負整数です.問題によれば, \sin^n x \cos^n x となっていたり(問題1で示すように正弦と余弦 I_n の値は同じです), n が正整数だったり,指数がずれていたりしますが,問題の解き方になんら変わりはありません.

ウォリス積分関連の問題は,慣れていないと難しいところがあるかもしれません.しかし逆に言えば出題されるような問題は限られていますので,解答の導出方法を覚えてしまえば非常に簡単な部類の問題に成り下がります.

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シグマ公式の証明

 \displaystyle \sum_{k=1}^n k^s の公式(以下、シグマ公式)の証明をできるだけ多く紹介しようと思います。

公式( s = 1)

 \displaystyle \sum_{k=1}^n k = \frac{n(n+1)}{2}

公式( s = 2)

 \displaystyle \sum_{k=1}^n k^2 = \frac{n(n+1)(2n+1)}{6}

公式( s = 3)

 \displaystyle \sum_{k=1}^n k^3 = \frac{n^2(n+1)^2}{4}

公式( s = 4)

 \displaystyle \sum_{k=1}^n k^4 = \frac{n(n+1)(2n+1)(3n^2+3n-1)}{30}

公式( s = 5)

 \displaystyle \sum_{k=1}^n k^5 = \frac{n^2(n+1)^2(2n^2+2n-1)}{12}

実はシグマ公式は、関-Bernoulli数を用いて一般化することができます。詳しくはこの記事の最後の参考記事〔1〕をご確認ください。

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