Rナギの数学日記

ゆまるの数学日記

元通信制高校生の数学ノート

一般化算術平均

 \displaystyle \frac{a + b}{2}

を算術平均(相加平均)と言うのでした.また高校数学では出てこないと思いますが,

 \displaystyle \frac{1}{\frac{\frac{1}{a} + \frac{1}{b}}{2}}

を調和平均と言います.少し書き方を変えれば調和平均は,

 \displaystyle \left( \frac{a^{-1} + b^{-1}}{2} \right)^{-1}

と表せます.ともすれば次のような関数が自然と定義できるはずです(お風呂で頭洗っているときに考えた).

Def. 一般化算術平均

 \displaystyle \mu_r (s;{\boldsymbol{\omega}})=\left(\frac{|\boldsymbol{\omega}^s|}{\#{\boldsymbol{\omega}}}\right)^{1/s}.

ここで , |\boldsymbol{\omega}^s| = \omega_1^s + \cdots + \omega_r^s である.

NOTE

  • 既に同じような関数はあるのかもしれません.
  • どんな性質があるのだろうか.
  • これは将来への自分への書き残しです.

Further Generalization

Def. 一般化平均

 \displaystyle M_r^f ({\boldsymbol{\omega}})=f^{-1}\left(\frac{|f\left(\boldsymbol{\omega}\right)|}{\#{\boldsymbol{\omega}}}\right).

ここで

  •  f(x) = x とすれば算術平均
  •  f(x) = 1/x とすれば調和平均
  •  f(x) = \log(x) とすれば幾何平均

積分感覚

受験生なので手抜きです.

放物線  C : y = x^2 上を点  \rm{P} (t,\, t^2) \, (0 \leqq t \leqq 1) が動く.放物線  C の点  \rm{P} における法線上に2 \rm{Q} \rm{R} を,点  \rm{P} からの距離がともに  \displaystyle \frac{1}{2}t(1-t) \sqrt{1 + 4t^2} となるようにとる.ただし,点  \rm{Q} は不等式  y \geqq x^2 の表す領域に含まれるようにとり,点  \rm{R} は不等式  y \leqq x^2 の表す領域に含まれるようにとる.

(1)省略

(2) t 0 から  1 まで変化するとき,点  \rm{Q} が描く曲線と点  \rm{R} が描く曲線で囲まれた部分の面積を求めよ.

(19年 千葉大学 医・理 後期)

微小量への理解があれば,このような問題でもサックっと答えが出せます(原題では点  \rm{Q} の座標を求めさせるよう誘導がかかっていたので,解答としてはもう少し厳密な議論が必要だった可能性はあります).

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※微小体積ではなく微小面積

フェルマーの二平方定理の一文証明の解説

とても美しい定理です.

定理(Fermatの二平方定理).  p を奇素数としたとき, p 2つの平方数の和で表せることの必要十分条件は, p 4で割った余りが 1になること*1である.

この定理に対して,20世紀後半にすんばらしい証明がZagierによって与えられました(いわゆるZagierの一文証明).


証明(Zagier)
有限集合  S:= \{(x, y, z) \in \mathbb{N}^3 : x^2 + 4yz = p\}( p p \equiv 1 \pmod 4 を満たす奇素数) 上の対合(involution):

 \displaystyle \begin{eqnarray}
\left( x, y, z \right) \rightarrow \left\{
\begin{array}{ll}
\left( x + 2z, z, y - x- z \right) \quad {\rm if} \ x < y - z \\
\left( 2y - x, y, x - y + z \right) \quad {\rm if} \ y - z < x < 2y \\
\left( x - 2y, x - y + z, y \right) \quad {\rm if} \ x > 2y \\
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}

は一つの固定点(fixed point)を持つため, |S|は奇数であり,対合  (x, y, z) \rightarrow (x, z, y) も固定点を持つ.□


用語の解説をしましょう.

  • 対合(involution)とは,2回施すと元に戻る写像(関数)のことです. f(x) = 1 - x などがその例に当たります( f(f(x)) = f^2(x) = x).また,ヒトの集合を  H *2とするとき, H 上で定義された「既婚者ならば配偶者を,未婚者ならそのヒト自身を返す」写像も対合になります.
  • 固定点(fixed point,不動点)とは,写像によって自分自身が返される点のことです. f(x) = 1 - x の例では  1 - x = x よ満たす値,すなわち  x = 1/2 が固定点になり,ヒトの例では未婚者が固定点になります.
  •  |S| は,有限集合  S の要素数を表します.高校数学的に書くと  n(S) です.


さて,この証明は一文で完結しており,見た目は非常に綺麗ですが,証明の詳細(行間)を汲み取るにはある程度の訓練が必要だと思います.この記事は,この一文証明をexpandして,複数のSTEPに分け解説し,証明の理解を促すものです.

証明の解説

STEP 1. 関数  \alpha:

 \displaystyle \begin{eqnarray}
\alpha : \left( x, y, z \right) \rightarrow \left\{
\begin{array}{ll}
\left( x + 2z, z, y - x- z \right) \quad {\rm if} \ x < y - z \\
\left( 2y - x, y, x - y + z \right) \quad {\rm if} \ y - z < x < 2y \\
\left( x - 2y, x - y + z, y \right) \quad {\rm if} \ x > 2y \\
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}

が対合であることを確認する.

ここで, \alpha の定義域に  x = y - z x = 2y の場合が含まれていないことが気になった人がいるかもしれない. \alpha S上で定義された関数であったから,上記の条件を満たす  S の要素
存在しないことを確認しよう.
 x = y - z のとき, (y - z)^2 + 4yz = p \Leftrightarrow (y + z)^2 = p であるから,これを満たす自然数  (y, z) は存在しない.
 x = 2y のとき, (2y)^2 + 4yz = p \Leftrightarrow 4y(y + z) = p であるから,この場合も同じである.

次に,

 S_1 = \{ (x, y, z) \in S : x < y - z \},\\ 
S_2 = \{ (x, y, z) \in S : y - z < x < 2y \}, \\ 
S_3 = \{ (x, y, z) \in S : x > 2y \}
とおく.
 S_3 = \alpha (S_1), \, S_2 = \alpha (S_2), \, S_1 = \alpha (S_3)
であることが簡単に確認できるので,確かに  \alpha は対合である.

STEP 2.  \alpha が固定点を持つことを確認する.

STEP 1の最後より, \alpha が固定点を持つならばそれは  S_2 の要素である.このとき,

 \displaystyle \begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{ll}
2y - x = x \\
x - y + z = z \\
\end{array}
\right. \Leftrightarrow x = y
\end{eqnarray}

であるから, S の定義より  x^2 + 4xz = p \Leftrightarrow x(x + 4z) = p であり, p素数であることから, (x, y, z) = (1, 1, \frac{p - 1}{4}) が唯一の固定点となる( p \equiv 1 \pmod 4 より  \frac{p-1}{4} \in \mathbb{N} であることに注意する).

STEP 3.  |S| が奇数であることを確認する.

 a \in SSTEP 2 で求めた固定点でないものとしたとき, b = \alpha (a) (\neq a) a の相方と呼ぶ. \alpha は対合であったから, b の相方は  a であり  a b はコンビとみなすことができる.固定点以外の  S の要素はあるコンビに属しており,固定点は相方を持たないため, |S|は奇数である.

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STEP 4. 対合  \beta : (x, y, z) \rightarrow (x, z, y) が固定点を持つこと, p が二つの平方数の和で表されることを確認する.

 |S| が奇数であるから, \beta による  S のコンビ分けが如何なるものであっても,ぼっちとなる要素が一つは存在する*3.これが固定点となる.これを  (x_0, y_0, y_0) とすれば  S の定義より

 x_0^2 + 4y_0 y_0 = x_0^2 + (2y_0)^2 = p
を満たすので, p は二つの平方数の和で表される.□

STEP 5. 必要十分(???)であることを確認する.

こんな記事を書いてて申し訳ないのですが,Zagierによる証明が「 p \equiv 1 \pmod 4  \Rightarrow  p が二つの平方数の和で表される」と「 p \equiv 1 \pmod 4  \Leftrightarrow  p が二つの平方数の和で表される」のどちらを意味するのかはっきり分かっていません.Zagierの論文を見た限り前者のような気がしますが*4....判明次第更新します.ちなみに「 p \equiv 1 \pmod 4  \Leftarrow  p が二つの平方数の和で表される」の証明は簡単です.

*1: p \equiv 1 \pmod 4 と表します.

*2:ここで,一夫多妻,一妻多夫は認めない.

*3:学校のクラス内で二人組を作るとき,クラスの人数が奇数なら必ずぼっちとなる人間が存在することと同じである.このとき,ぼっちとなる人間が一人しかいない訳ではないことに注意する.

*4:この証明から逆が言えるのかも考えましたが,自分が考えた範囲では言えないのではないかという結論に至りました.

eの表示

今日,twitterで以下の等式を見つけた.

 \displaystyle e = \frac{2 \cdot 2^{\left( \ln 2 - 1 \right)^2} \cdot \cdots}{2^{\ln 2 - 1} \cdot 2^{\left( \ln 2 - 1 \right)^3} \cdot \cdots}.

元ツイートには割と自明な等式と書かれており,自明な等式に思えなかった私は自分を恥じた.

最初,メルカトル級数と関係あるのか??と思い路頭に迷っていたが,10分ほどして割とあっさりと証明を与えられた(やったぜ.).

この等式を一般化た次の等式が成り立つ.

 0 < a < b < 1のとき,または  1 < b < a のとき,

 \displaystyle a = \frac{b \cdot b^{\left( \log_a b - 1 \right)^2} \cdot \cdots}{b^{\log_a b - 1} \cdot b^{\left( \log_a b - 1 \right)^3} \cdot \cdots}.

証明は自明らしいので省略します.

素数の無限性の証明 : Proofs of The Infinitude of Primes

Theorem(Euclid). There are infinitely many prime numbers.

人類たるもの知っておくべき事実でしょう。この記事では、上の定理の証明を高校数学の範囲内*1で、できるだけ多く紹介しようと思います。

素数の無限性の証明は、大きく次の2つに分けられます。

  • 素数を有限と仮定して矛盾を導く。
  • 互いに素な組を無限に生成する。
注意
  • 細かな定理、補題の証明は省きます。
  •  \mathbb{N}自然数全体の集合、 \mathbb{P}素数全体の集合、 p_n n番目の素数 P素数の総積とします。

証明

Proof 1.  q_1, q_2, q_3, \cdots, q_n を異なる n個の素数とする。 nによらず、新しい素数 q_{n+1}を生成出来れば証明は完了する。ところで  N := q_1 q_2 q_3 \cdots q_n + 1 q_i (1 \leq i \leq n) で割り切れない。 2以上の自然数素因数分解可能なので、 Nは素因数 q_{n+1}を持つ。□

Proof 2. 素数を有限個と仮定する。 P + 1 は如何なる素数でも割り切れない。これは 2以上の自然数素因数分解可能であることに矛盾する。□

Proof 3. 任意の正整数 n_1につき、 n_1 (n_1 + 1)をとる。このとき、 n_1 n_1 + 1は互いに素なので、 n_1の素因数の集合は、 n_1 (n_1 + 1)の素因数の集合の真部分集合である。 n_2 = n_1 (n_1 + 1), n_3 = n_2 (n_2 + 1), \cdots と定めることによって、同様の議論を無限回繰り返すことができる。□

Proof 4. 非負整数 nについて、 F_n := 2^{2^n} + 1 と定める。任意の正整数  n について、等式

 F_n - 2 = F_1 F_2 F_3 \cdots F_{n-1}

が成り立つ。これは数学的帰納法より簡単に示せる。 m < n を満たす正整数  m につき、 F_n F_m の最大公約数を dとする。上の等式より、 F_n - F_1 F_2 F_3 \cdots F_{n-1} = 2 dで割り切れるが、 F_n は定義式より奇数である。よって  d = 1 であり、 F_1, F_2, F_3, \cdots, F_{n-1} はどの 2つを取っても互いに素である。□

Proof 5. 素数を有限個と仮定する(その個数を nとする)。 N > P を満たすような Nを任意に取る。このとき、 N以下の素数の2乗で割り切れない数は 2^n個( Pの約数の個数と考えれば良い)。 N以下の素数の2乗で割り切れる数は多くとも  \sum_{i=1}^n N / p_i^2 個である。よって、 \delta > 0 を用いて

 \displaystyle N \leq 2^n + \sum_{i=1}^n \frac{N}{p_i^2} < 2^n + N \sum_{k=2}^{\infty} \frac{1}{k^2} = 2^n + N (\sum_{k=1}^{\infty} \frac{1}{k^2} - 1) = 2^n + N(1 - \delta) \left( \because \sum_{k=1}^{\infty} \frac{1}{k^2} < 2 \right)

従って、 N \delta < 2^n であるがこれは十分大きい Nを取れば成り立たない。□

Proof 6. 素数を有限個と仮定する。 pをある素数とする。このとき

 \displaystyle 0 < \sin \left( \frac{\pi}{p} \right) = \sin (\pi \frac{1 + 2P}{p}) = 0

がとある pで成り立つ。□

Proof 7. 素数を有限個と仮定する。素数 pが正整数 nを割り切る回数を v_p(n)で表す。Legendreの公式より、

 \displaystyle v_p(n!) = \sum_{i=1}^{\infty} \left[ \frac{n}{p^i} \right] \leq \sum_{i=1}^{\infty} \frac{n}{p^i} = \frac{n}{p-1} < n

 \displaystyle n! = \prod_{p:prime} p^{v_p(n!)} < \prod_{p:prime} p^n = P^n

である。しかしこれは十分大きい nで成り立たない。□

Proof 8. 任意の自然数 N (\geq 2)に対して、 N以下の素数の個数を nとする。 P = p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_n^{e_n} (e_i \geq 1) と定める。また  P = \delta_1 \delta_2 (\delta_1 \leq \delta_2) を満たすような、互いに素な自然数  \delta_1, \delta_2 を取り  Q = \delta_2 - \delta_1 と定める。ここで、 Q N 以下の素数では割り切れないから、 N 以上の素数の積である。□

Proof 9. ゼータ関数のEuler積表示より、

 \displaystyle \sum_{k=1}^{\infty} \frac{1}{k} = \prod_{p:prime} \frac{1}{1-p^{-1}}

である。左辺は調和級数となり発散する。よって右辺は無限積。□

Proof 10.  F(n) n の素因数の個数とする。素数を有限個と仮定すれば、 F(n) は周期  P の周期数列であるが、 F(n) = 0 \Leftrightarrow n = 1 より矛盾である。□

Proof 11. 素数を有限個と仮定する(その個数を n ( \geq 2)とする)。 P = p_2 p_3 \cdots p_n = 3 p_3 \cdots p_n とすれば  P - 2 P と互いに素であり、奇数の素因数を持たない。しかし、 P -2 は奇数だから、 P = 3 。すなわちこの世に素数 2, 3 のみである。□

随時更新予定・・・(予定)

*1:ここで高校数学の範囲とは、私の独断と偏見による.まあ,高校生が頑張れば理解できる範囲だと思います.