Rナギの数学日記

ゆまるの数学日記

元通信制高校生の数学ノート

素数の無限性の証明 : Proofs of The Infinitude of Primes

Theorem(Euclid). There are infinitely many prime numbers.

人類たるもの知っておくべき事実でしょう。この記事では、上の定理の証明を高校数学の範囲内*1で、できるだけ多く紹介しようと思います。

素数の無限性の証明は、大きく次の2つに分けられます。

  • 素数を有限と仮定して矛盾を導く。
  • 互いに素な組を無限に生成する。
注意
  • 細かな定理、補題の証明は省きます。
  •  \mathbb{N}自然数全体の集合、 \mathbb{P}素数全体の集合、 p_n n番目の素数 P素数の総積とします。

証明

Proof 1.  q_1, q_2, q_3, \cdots, q_n を異なる n個の素数とする。 nによらず、新しい素数 q_{n+1}を生成出来れば証明は完了する。ところで  N := q_1 q_2 q_3 \cdots q_n + 1 q_i (1 \leq i \leq n) で割り切れない。 2以上の自然数素因数分解可能なので、 Nは素因数 q_{n+1}を持つ。□

Proof 2. 素数を有限個と仮定する。 P + 1 は如何なる素数でも割り切れない。これは 2以上の自然数素因数分解可能であることに矛盾する。□

Proof 3. 任意の正整数 n_1につき、 n_1 (n_1 + 1)をとる。このとき、 n_1 n_1 + 1は互いに素なので、 n_1の素因数の集合は、 n_1 (n_1 + 1)の素因数の集合の真部分集合である。 n_2 = n_1 (n_1 + 1), n_3 = n_2 (n_2 + 1), \cdots と定めることによって、同様の議論を無限回繰り返すことができる。□

Proof 4. 非負整数 nについて、 F_n := 2^{2^n} + 1 と定める。任意の正整数  n について、等式

 F_n - 2 = F_1 F_2 F_3 \cdots F_{n-1}

が成り立つ。これは数学的帰納法より簡単に示せる。 m < n を満たす正整数  m につき、 F_n F_m の最大公約数を dとする。上の等式より、 F_n - F_1 F_2 F_3 \cdots F_{n-1} = 2 dで割り切れるが、 F_n は定義式より奇数である。よって  d = 1 であり、 F_1, F_2, F_3, \cdots, F_{n-1} はどの 2つを取っても互いに素である。□

Proof 5. 素数を有限個と仮定する(その個数を nとする)。 N > P を満たすような Nを任意に取る。このとき、 N以下の素数の2乗で割り切れない数は 2^n個( Pの約数の個数と考えれば良い)。 N以下の素数の2乗で割り切れる数は多くとも  \sum_{i=1}^n N / p_i^2 個である。よって、 \delta > 0 を用いて

 \displaystyle N \leq 2^n + \sum_{i=1}^n \frac{N}{p_i^2} < 2^n + N \sum_{k=2}^{\infty} \frac{1}{k^2} = 2^n + N (\sum_{k=1}^{\infty} \frac{1}{k^2} - 1) = 2^n + N(1 - \delta) \left( \because \sum_{k=1}^{\infty} \frac{1}{k^2} < 2 \right)

従って、 N \delta < 2^n であるがこれは十分大きい Nを取れば成り立たない。□

Proof 6. 素数を有限個と仮定する。 pをある素数とする。このとき

 \displaystyle 0 < \sin \left( \frac{\pi}{p} \right) = \sin (\pi \frac{1 + 2P}{p}) = 0

がとある pで成り立つ。□

Proof 7. 素数を有限個と仮定する。素数 pが正整数 nを割り切る回数を v_p(n)で表す。Legendreの公式より、

 \displaystyle v_p(n!) = \sum_{i=1}^{\infty} \left[ \frac{n}{p^i} \right] \leq \sum_{i=1}^{\infty} \frac{n}{p^i} = \frac{n}{p-1} < n

 \displaystyle n! = \prod_{p:prime} p^{v_p(n!)} < \prod_{p:prime} p^n = P^n

である。しかしこれは十分大きい nで成り立たない。□

Proof 8. 任意の自然数 N (\geq 2)に対して、 N以下の素数の個数を nとする。 P = p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_n^{e_n} (e_i \geq 1) と定める。また  P = \delta_1 \delta_2 (\delta_1 \leq \delta_2) を満たすような、互いに素な自然数  \delta_1, \delta_2 を取り  Q = \delta_2 - \delta_1 と定める。ここで、 Q N 以下の素数では割り切れないから、 N 以上の素数の積である。□

Proof 9. ゼータ関数のEuler積表示より、

 \displaystyle \sum_{k=1}^{\infty} \frac{1}{k} = \prod_{p:prime} \frac{1}{1-p^{-1}}

である。左辺は調和級数となり発散する。よって右辺は無限積。□

Proof 10.  F(n) n の素因数の個数とする。素数を有限個と仮定すれば、 F(n) は周期  P の周期数列であるが、 F(n) = 0 \Leftrightarrow n = 1 より矛盾である。□

Proof 11. 素数を有限個と仮定する(その個数を n ( \geq 2)とする)。 P = p_2 p_3 \cdots p_n = 3 p_3 \cdots p_n とすれば  P - 2 P と互いに素であり、奇数の素因数を持たない。しかし、 P -2 は奇数だから、 P = 3 。すなわちこの世に素数 2, 3 のみである。□

随時更新予定・・・(予定)

*1:ここで高校数学の範囲とは、私の独断と偏見による.まあ,高校生が頑張れば理解できる範囲だと思います.